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書店は「探す場所」から「出会う場所」へ セレンディピティ再評価の一方で問われる持続可能性

2026/1/4
更新: 2026/1/15

「正しい。セレンディピティの場所としての価値がある。」

吉祥寺の書店関係者による「書店は本を『探す』場所ではなく、『出会う』場所だ」という発言に対し、脳科学者の茂木健一郎氏がこうコメントし、擁護の姿勢を示しました。ネット検索やECが高度化する中で、書店ならではの価値を「偶然の発見」に見いだす考え方は、一定の支持を集めています。

知らなかったものを、欲しいと思わせる

吉祥寺の書店関係者は、別の場で次のようにも語っています。

「お客さんが知っているものだけを売っていたのでは、商売は先細りになります。知らなかったものを欲しいと思ってもらうこと、それが商売の本質です。」

この発言は、アルゴリズムによるレコメンドが主流となった現代の消費環境へのアンチテーゼです。書店は単なる流通拠点ではなく、編集された空間として「欲望を更新する装置」であるべきだ、という思想が背景にあります。

はしゃぐだけでは本は売れない

しかし、こうした理念に対しては、現場視点からの厳しい声も上がっています。

「正直言いたくないが、こういう古本屋はもう陳腐化している。ジュンク堂のような大型書店は本が探しにくい。本が大量に並んでいてはしゃぐのは本好きだけで、はしゃぐだけでは本は買われない。固定費はかかるが、採算は取れない。」

セレンディピティを価値として掲げても、それが売上に直結しなければ事業は成立しません。本好きが採算を度外視して支えているだけでは、持続可能性はないという指摘もあります。まんだらけのように、ジャンルや顧客層を徹底的に特化させるモデルこそが、生き残りの条件になるという見方も強まっています。

見え始めた次の課題

さらに、今後の構造的な問題として指摘されているのが、古書そのものの減少。新刊書籍の売上低下、電子書籍の普及、メルカリやヤフオクなど個人間取引の拡大により、良質な古書が市場に回りにくくなっています。

過去に刊行された書籍の総量は膨大で、短期的に枯渇するわけではないものの、「仕入れられる古書」が減っていくという長期的なリスクは避けられないでしょう。

書店数はピーク時の3分の1 再評価されるセレンディピティ

ネット通販の普及を背景に、書店の販売額は前年比4.8%減少しています。店舗数はピーク時の約3分の1にまで減少しています。こうした厳しい現実の一方で、「偶然の出会い」という書店体験の価値を改めて評価する動きが、本好きの間で広がっているのも事実。

書店は今、文化的価値と経済的持続可能性という二つの要請の間で揺れています。セレンディピティを掲げるだけでなく、それをどう商売として成立させるのか。

書店の次の姿が、問われています。