文学フリマ、何冊持っていけばいい?経験者の声から見る適正部数
「初めての文学フリマ出展、何冊刷ればいいんだろう?」
この問いに、絶対的な正解はありません。でも、多くの出展者の経験を集めると、ある程度の傾向が見えてきます。この記事では、初参加から3回目以降まで、それぞれのステージでの「現実的な部数」を考えていきます。
初参加:20〜30部が現実的なライン
実際の初参加者の声
まず、知名度がほとんどない状態で初参加した方々の実例を見てみましょう。
Aさん(東京開催、歴史解説本)
印刷:35部
販売:19冊(友人含む)
「Webカタログで7件お気に入りされて、それなりに手応えはあったんですが…」
Bさん(東京開催、小説)
印刷:30部
販売:27冊
「来場者数が過去最多の回だったのが幸いしました」
Cさん(初参加、詩集)
印刷:不明
販売:6冊(ほぼ隣接ブースと知人)
「詩は本当に厳しいと実感…」
これらの事例から見えるのは、初参加で完全に知名度がない場合、10〜30冊程度が現実的なラインだということです。
なぜ初参加は売れにくいのか?
理由は明確です。来場者の多くは「読みたい本」を事前に決めてきています。Webカタログでチェックした本、Twitterやnoteでフォローしているサークルの本。
あなたのブースに偶然立ち寄ってもらうには:
目を引く表紙
わかりやすいタイトル
試し読みでの第一印象
この「偶然の出会い」で本を手に取ってもらうのは、想像以上にハードルが高いのです。
初参加の適正部数の考え方
保守的に考えるなら:20部
友人・知人:5冊
SNSでの告知効果:5冊
当日の偶然の出会い:10冊
やや強気に考えるなら:30部
SNS告知をしっかり行う(毎日投稿)
見本誌コーナーへの提出
表紙と試し読みで勝負
2回目の参加:前回の1.2〜1.5倍が目安
リピーターの強み
2回目以降の最大の武器は「前回買ってくれた人」の存在です。
Dさんの事例(小説サークル)
1回目:30部印刷→25冊販売
2回目:40部印刷→35冊販売
「前回買ってくれた方が5名くらい来てくれました。既刊も2冊ずつ売れて嬉しかった」
Eさんの事例(詩集)
1回目:印刷部数不明→6冊販売
2回目:60部印刷→30冊販売(※名義変更・SNS強化)
「1回目が厳しすぎたので、戦略を全面的に見直しました」
2回目で気をつけること
前回の実績をそのまま信じすぎない
前回売れたからといって、単純に「前回×2倍」とするのは危険です。なぜなら:
開催時期によって来場者数が変わる
他の人気サークルの出展状況も影響する
自分のSNSでの告知の質が変わる
現実的な考え方:
前回25冊売れた → 2回目は30〜35部(1.2〜1.4倍)
SNS告知を強化した → 2回目は35〜40部(1.4〜1.6倍)
ジャンルを変えた → 初参加と同じ考え方で
3回目以降:固定ファンとの関係が鍵
「待ってくれている人」がいる強さ
3回目以降になると、明確な変化が起きます。
Fさんの事例(評論サークル)
1回目:20冊
2回目:28冊
3回目:40冊
4回目以降:安定して35〜45冊
「毎回買いに来てくれる方が10名くらいいて、その方々とは顔見知りになりました。新刊だけでなく、既刊も『読んでなかったので』と買ってくれます」
3回目以降の部数の決め方
前回実績 + 新規開拓の見込み
例えば前回40冊売れた場合:
固定ファン:10冊
リピーター:15冊
新規:15冊
→ 次回は45〜50部
ただし、在庫リスクとのバランスも重要です。50部印刷して30部しか売れないより、40部印刷して完売する方が次回に繋がります。
ジャンルによる大きな差
売れやすいジャンル
エッセイ・ノンフィクション
「知らない人の本でも内容に興味があれば買う」層が多い
タイトルで内容が伝わりやすい
初参加でも25〜35冊を目指せる
評論・批評
特定のテーマ(アニメ、映画、文学作品)に興味がある人は必ずブースに寄る
ニッチでも確実なファンがいる
初参加でも20〜30冊は見込める
売れにくいジャンル
小説
「知らない作家の小説を買う」ハードルが高い
表紙と冒頭数ページで判断される
初参加では15〜25冊が現実的
詩歌
最も販売が難しいジャンル
固定ファンがつくまで時間がかかる
初参加では10〜20部でスタートが安全
なぜこの差が生まれるのか?
エッセイや評論は「部分的に読むだけでも価値がある」と思ってもらえます。一方、小説や詩は「最後まで読んで初めて価値がわかる」ため、未知の作家への投資を躊躇する人が多いのです。
地域による違い
意外と知られていませんが、開催地によって売れ行きが大きく変わります。
東京開催の特徴
来場者数:最多
ブース数:最多
結果:埋もれやすい
地方開催の特徴
来場者数:東京より少ない
ブース数:東京より少ない
結果:全ブースを回ってもらえる可能性が高い
実例:
同じサークルが、香川開催で39冊、東京開催で19冊という結果。約2倍の差がついています。
地方開催に初参加するなら、東京より5〜10部多めに刷っても良いかもしれません。
価格設定も売れ行きに影響する
衝動買いされやすい価格帯
300〜500円: 「ちょっと気になるから買ってみよう」と思ってもらえる
500〜700円: 標準的な価格帯、内容次第
1,000円以上: 「本当に面白いのか?」を吟味される
初参加で知名度がない場合、500円以下に設定すると手に取ってもらいやすくなります。逆に1,000円を超えると、よほど内容に自信がない限り、ハードルは高いでしょう。
SNS告知の重要性
「文学フリマ 売れない」で検索すると、多くの出展者が「SNS告知をもっとすればよかった」と後悔しています。
告知の有無で変わる売上
告知なし: ほぼ偶然の出会いのみ(5〜15冊)
告知あり(数回程度): +5〜10冊
告知をしっかり(毎日投稿): +10〜20冊
特に効果的なのは:
Webカタログへの登録と「お気に入り」の呼びかけ
#文学フリマ タグでの定期投稿
表紙や試し読みページの公開
「どんな内容か」を丁寧に説明
時間帯による売上の偏り
文学フリマの売上は、時間帯で大きく偏ります。
12:00〜14:00(開始2時間): 売上の50〜60%
14:00〜15:00: まばら
15:00〜16:00: 小さな波(再来場者)
16:00〜17:00: 閉会間際の駆け込み
つまり、最初の2時間が勝負です。この時間に確実に対応できるよう、準備は早めに済ませましょう。
在庫リスクをどう考えるか
損益分岐点を計算してみる
例:30部印刷、印刷単価200円、販売価格500円の場合
印刷コスト: 200円 × 30部 = 6,000円
損益分岐点: 6,000円 ÷ 500円 = 12冊
つまり、12冊売れれば赤字にならない計算です。
もし20冊売れれば:
売上:500円 × 20冊 = 10,000円
コスト:6,000円
利益:4,000円
逆に5冊しか売れなかった場合:
売上:500円 × 5冊 = 2,500円
コスト:6,000円
損失:3,500円
最悪の場合の損失は6,000円(全く売れなかった場合)
このように「最悪いくら損するか」を事前に計算しておくと、安心して挑戦できます。
在庫を抱えることの心理的負担
「50部刷って20部余った」というのは、金銭的損失だけでなく心理的にもダメージが大きいものです。特に初参加の場合、確実に捌ける部数で勝負する方が、次回への意欲に繋がります。
実践的なアドバイス
初参加の方へ
まずは20〜30部でスタート
売り切れたら「次回はもっと刷ります!」でOK
「完売しました」は次回への期待を生む
余った本は次回に持ち込める
2回目の方へ
前回の1.2〜1.5倍を目安に
前回買ってくれた人がリピートしてくれる可能性
SNS告知を前回より強化する
既刊も持っていくとリピーターが買ってくれる
3回目以降の方へ
固定ファンの数を把握する
「毎回買いに来てくれる人」が何人いるか?
その数をベースに新規開拓分を上乗せ
安定した部数で継続することが信頼に繋がる
どのジャンルにも共通すること
見本誌コーナーへの提出は必須(ここで見つけて買いに来る人が多い)
表紙で「何の本か」を一瞬で伝える
試し読みは最初の数ページを別紙で
ブース装飾はシンプルに(本が埋もれないように)
開始2時間が勝負(この時間は絶対に席を外さない)
最後に:数字だけが全てじゃない
ここまで「何冊売れるか」という数字の話をしてきましたが、文学フリマの本当の価値は数字だけではありません。
1冊でも「面白かったです」と言ってもらえた喜び
同じジャンルの出展者との交流
次回作への意欲
読者との直接の対話
10冊しか売れなくても、その10人との出会いは確実にあなたの糧になります。
だからこそ、最初は無理のない部数で、安心して挑戦してほしいのです。20部でも30部でも、その一冊一冊が、誰かの本棚に並ぶ。それが文学フリマの素晴らしさです。
あなたに最適な部数を診断します
「結局、自分の場合は何冊がいいの?」
そう思った方のために、私たちは条件に合わせた適正部数を診断するツールを作りました。
ジャンル
開催地
参加回数
SNS告知の有無
フォロワー数
価格設定
これらを入力するだけで、おすすめ部数と期待売上を自動計算します。
診断結果はデータとして蓄積され、今後の精度向上に活用されます。イベント後に「実際に何冊売れたか」をフィードバックしていただければ、あなたの経験が次の初参加者の助けになります。
初めての文学フリマ、不安でいっぱいだと思います。
でも、まずは小さく始めて、一歩ずつ前に進んでいきましょう。あなたの本を待っている読者が、きっといます。
